2019年05月

手紙

「せんせえ、さよおなら!」  廊下越しに、まだ舌足らずな挨拶が聞こえてくる。その声に続いて、私の大好きな穏やかな声が聞こえてくる。 「はい、さようなら。また明日ね」  私の目の前を、私の胸ぐらいの背の高さの男の子が駆け抜続きを読む

第二話:がらんどう

 肩を抱かれながら、ユキの横顔を眺める。長く伸びた睫毛は、きれいにカールしている。くっきりとした二重。鼻筋はすっと通っている。陳腐な表現だが、アイドル顔というのだろうか。きれいな顔立ちと、見合わないぐらいの低めの声。  続きを読む

第一話:興味の持てない女

 土曜日の朝の渋谷が好きだ。青みがかった透明な空気。道路に寝そべる若者。その脇を気にもとめず歩いていく人たち。夜にあれだけいた人はどこに行ってしまったのだろう。きっと皆家に帰ったんだろう。今ここにいるのは、ほとんどがあぶ続きを読む